日本人の父親に認知されたように装い、日本国籍を取得させたとして、県警がペルー人の女らを電磁的公正証書原本不実記録・同供用容疑で逮捕した事件は、父親が日本人の場合、出生前に認知すれば日本人と認める国籍法の「胎児認知制度」を悪用した典型例だ。昨年12月の同法改正で、出生後の非嫡出子(婚外子)にも適用が広がり、県警は「偽装認知」の増加への警戒を強めている。(上村香代)  今回、逮捕されたペルー人の母親(42)は、16年前に短期滞在ビザで入国した不法残留者だった。偽装認知は、日本国籍を取得した子の養育者として、定住者資格を得るのが目的だったとみられる。逮捕者の中には、仲介料を受け取っていた暴力団幹部の男(43)がおり、暴力団の資金源となっていた可能性もあるという。  県警は昨年1年間で508人の不法滞在者を摘発。現在、県内の不法滞在者は推定で2500人に上る。県警警備1課は「不法な手段で在留資格を得ようとする者がいつ出てきてもおかしくない」と指摘する。  津地方法務局によると、県内では法改正後、韓国人の母親から生まれた婚外子が日本国籍を取得したケースが1件あった。その一方、法改正が偽装認知に悪用されないよう、法務省は昨年12月、防止策を記した通達を各地の法務局に出した。津地方法務局でも、両親と面談して認知に至った経緯を聞き取り、親子3人で撮った写真の提出を求めるなど、審査を厳格化する対策を取っている。  外国人の国籍取得事務を手伝う伊賀市の行政書士村田順明(のりあき)さん(60)の事務所には、法改正後、婚外子の国籍取得を希望する外国人からの相談が3件寄せられた。そのうち1件は母親がブラジル人で、取得への準備を進めている。「まだ4歳になる子だが、母親が強制送還されずに済むので、国籍取得の道が広がる法改正は、彼女たちにとって良かった」と話す。その一方、「善良な市民生活を送る外国人の国籍取得が進むよう、行政書士としても、疑わしいケースを見分けて断るなどし、犯罪を未然に防止しなくてはいけない」と気を引き締めている。 (2009年6月19日 読売新聞)